近年では働き方改革やテレワークの普及に伴い、「つながらない権利」が注目を集めています。これは、勤務時間外に業務連絡への対応を強制されない権利を指し、従業員の心身の健康を守る観点から重要な考え方です。現在労働基準法改正の一重要項目として、これの法制化が議論されています。
この議論の根底にあるのが、勤務時間外であっても上司からの指示で即時対応を求められる場合、その時間は労働時間と判断される可能性があること。また企業には従業員の健康を守る「安全配慮義務」があるため、常に業務に拘束されるような状態を放置することはリスクとなることです。
実際に、長時間労働や過度なストレスが原因でメンタル不調を引き起こすケースも増えています。休みの日まで会社に追っかけられたくない、至極当たり前の感情です。
しかし、そもそもなぜ勤務時間外に業務連絡を入れる必要があるのか。上司(または同僚)が休んだ担当者に連絡して対応を求めざるをえない状況について問題意識を持つほうが先ではないか。特に中小企業では往々にして以下のような問題点をはらみ、それが当たり前になっている状況が多いのではないかと考えます。
・業務が特定の人に集中している。
・業務の属人化 = 部所内での個人商店化が進み、「隣の人は何する人ぞ。」状態に陥っている。
・人手不足を前提に無理な業務設計になっていないか。
その人が休むことにより、例えばその内容について顧客から問い合わせがあっても誰も返答できず、「担当に確認して折り返し連絡します」からの「ごめん休み中~」につながる。よくあるだろう光景です。
企業に求められるのは、「つながらなくても済む仕組みづくり」を進めることです。業務の属人化を前提としない情報共有、緊急時の判断フローや代替要員の設定など、特定の個人に負担が集中しない体制を整えることが必要です。
同時に、従業員自身の側にも「つながらなくて済むための工夫」が求められます。例えば、退勤前や休暇前に引き継ぎ事項や対応状況を簡潔にまとめておくなど、自分が休んでいる間も仕事が滞らない状態を意識的につくることは、結果として「つながらなくてもよい」環境を支える要素になるでしょう。そもそも「自分がいなきゃ廻らない」仕事なんてないんだから。(もちろん業務手順書(マニュアル)の作成が一番ですが、残念ながら作成・運用まではそう簡単ではないと思っています。組織内に「マニュアルを作るためのマニュアル」がないとただの「分らない人が見てもさっぱり要領を得ない」自己満足なものになりがちだからです。)
今回労基法改正により「業務時間外の連絡」を強制的に規制する議論となっており、もちろん企業としては、就業規則に勤務時間外の連絡ルールを明記したり、緊急時の対応範囲を明確にしたりするなどの実務的な対策を講じることが求められますが、それ以前に上に書いたような事を考慮しておかないと、現場がその規定に抑えられ停滞してしまう羽目にもなりかねません。
「つながらない権利」を「業務外に連絡してはいけなくなる!!」と解釈せず、「業務外に連絡する必要なんてある?」 といえる職場に変換するきっかけになればいいなと思っています。


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