固定残業代があるから残業代を払わなくていい?

 残業代、つまり時間外手当ですが、これに関してはもめごとが絶えません。サービス残業、名ばかり管理職問題等々、、、 
 そんな中でも特に中小企業に多いのが、「うちは固定残業代を払っているから、残業代はもう払わなくていい」という誤解です。しかし、これは法律上まったくの誤りであり、未払い残業代トラブルの典型例です。固定残業代とは、あくまで“あらかじめ一定時間分の残業代を前払いしているだけ”であり、残業代そのものを免除する制度ではありません。(と言うと、「うちは超過してない、時間内に抑えている。」とほぼ全員回答するのですよね)

 例えば当たり前の前提として、固定残業代として月20時間分を支給している場合、実際の残業が25時間なら、超過した5時間分の残業代を追加で支払う必要があります。ところが実務では、この「超過分の精算」が行われていないケースが非常に多く、これが未払い残業代請求の大きな火種になります。ひどいところになると、残業代は前払いしてあるから、と実労働時間をカウントしていないところも少なくはないようです。(あくまで聞いた話ですよ?)
 考えてみればそりゃそうです。残業は日常化しているけど、いちいち時間外労働のカウントをするのが面倒なので「何時間分先払いするで」となってるわけで、しっかりカウントしてるのならその時間分しっかり払えばいいだけなんです。15時間で済んだ月は20時間払う必要ないわけでね。
 さらに問題なのは、固定残業代の制度自体が“要件を満たしていない”ケースです。法律上、固定残業代を有効にするには、
①契約書や就業規則で明確に合意していること
②通常の賃金と固定残業代が明確に区分されていること
③固定時間を超えた分を追加で支払っていること

の3つが必要です。これらが曖昧なまま「営業手当」「職務手当」などの名目で残業代を含ませている場合、固定残業代は無効と判断されます。
 固定残業代が無効になるとどうなるか。支払っていた固定残業代は“ただの基本給”として扱われ、残業代の計算基礎が上がります。その結果、過去2〜3年分の残業代をすべて計算し直すことになり、遅延損害金や付加金(最大で未払い残業代と同額)が加算されることもあります。会社にとっては非常に大きなリスクです。
 
 固定残業代は、正しく運用すれば便利な制度です。しかし、「残業代込みの給料」(だから細かいチェックは必要ない)という誤解のまま使うと、企業は一気に危険な状態に陥ります。固定残業代があるから残業代を払わなくていい――この誤解をまずは自身が思い込んでいないでしょうか。

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